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【2009-11-02(Mon) 01:44:38】
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付き合い始めた頃は、非常に楽しかった。
もともと僕は押しの強いタイプではないので、自力で彼女を作る力量はなかったと思う。
けれど二十台も半ばに近づいてきて、独り身でいることが何となく寂しいなんていう時に、それなりに可愛くて、料理も美味い―それも二つ年下の女の子―に告白された日には、断る理由など、到底思いつかなかった。
しかし付き合って一年過ぎた頃から、ときどき彼女に一方的に責められることが多くなった。
どうしてそんなに優柔不断なの。
どうして自分の意見をしっかりと言えないの。
私との関係どう思っているの。
あなたって一体、何を考えているの。
時には冷静に、時には金きり声をあげながら、彼女は僕を責めた。
そして、僕たちは終わった。
だから僕は今、女の子という存在に関して、非常に困惑した思いを持っている。何をどうしてあげれば女の子は満足するのか、僕にはわからないのだ。それは致命的なことなのではないか。だから僕は、きっと何となく年をとっていき、ずっと独りで―。
〔あなたの声が好きなんです、だからもう一度お願いしますけど〕
〔はあ〕
〔私と付き合ってください、ね〕
ね、って。
僕は画面に映し出される文字をただ眺めて、しばらく呆然としてしまった。
〔とにかく一度、会いたいです〕
そう、彼女は僕の目の前はいない。
代わりに僕の目の前にいるのは、見慣れたノートパソコンの液晶画面くんだ。
彼女(多分)は、ハンドルネームをキシリトールガールという。年齢は二十七歳だそうだ。偽っていなければ。性別も、女性だ…と思う。それこそ、偽っていなければ。
しかしながら、僕は彼女を女の子だろうと信じて疑っていなかった。
僕たちは、趣味を介してブログで知り合った。
要するに彼女は、あまり有名ではないバンドやソロシンガーを応援するのが生きがいみたいな女性で、いっぽう僕は歌手になれたらいいのにと幼い頃から思いながらも、何も行動しないままサラリーマンとなり、しかし趣味で自分の歌をブログで公開しているという男で―――。
そんな二人がなんとなく知り合って、今までメッセンジャーで数回とりとめもない会話をしたことはあったけれど、それでも今日このように告白された事は、意外中の意外だった。
〔自信ないな〕
〔顔のですか?〕
〔うーん、それもあるけど〕
〔過去のトラウマですか〕
〔まあね…〕
〔私だって処女ではないです。死にたいです〕
物騒な事を、突然いう女の子だと思う。やはり、僕にはとてもじゃないけど無理じゃないだろうか。
〔それくらいで死にたいなら、みんな死んでると思うよ〕
〔でも、私はたった一人の大好きな人とだけ結ばれるのが夢だったから〕
〔まさか強姦されたとかじゃないよね〕
〔そうだったら、別の苦しみはあったと思うけど〕
自分の責任になってしまうことは、時に辛い事だ。
僕はとつぜん彼女に興味を持った。処女ではないから死にたいという彼女は、きっと男にたいして操を立てたかったタイプに違いない。それに、とても純粋な子なのかもしれない。けれど、きっと信じていた恋に破れた。そして残ったのは処女ではない自分だけ。きっと女の子にとっては、辛い事だったに違いない。その子の価値観にもよるだろうけれど。
それでも、彼女は僕を好きだから付き合ってくれ、という。
僕にそんな風にいえるようになるまで、彼女はどれだけ葛藤し、そしてどんな思いで僕の歌を聴いていてくれたのだろう。
彼女はただものではないかもしれない。少なくとも、自分は愛されて当然だと主張するような、僕の苦手な部類の子ではないのではないか?
僕は、がぜん興味がわいてきた。
〔よし、会おうか〕
〔あの、とつぜん変なことしたりしないですから、安心してください〕
〔女の子のセリフじゃないな〕
〔だって、やっぱりインターネットで知り合うなんてきもちわるいかなって〕
「そんなことないよ」
僕は、文字を打たずに、ただ液晶画面に向かって呟いた。
「きっと、君は綺麗な子なんだろうね」
『その本質が美しいのであるならば』
オリジナルSS
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【2009-10-31(Sat) 01:58:31】
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